人類の共有資産としての美術工芸品、建造物そして学術資料などの文化財は、経年変化、環境変化、自然災害、あるいは戦争などの人的破壊によって、つねに消滅崩壊の危機にさらされています。現存する文化財は、多くの人々の知恵によってこれまで適切な管理と保存修復がなされ継承されてきました。しかし、近年の旺盛な観光需要や知的関心の高まりによって文化財への負荷が増大し、一般公開だけでなく学術研究への活用にとっても一定の制約を課す必要が生じつつあります。
その一方で、近年、文化財に関するより精度の高いデジタルアーカイブ・データの取得を目指す新しい技術開発も進められており、採取された最新データは、多くの人々に時間や距離という限界を超越した研究、公開、鑑賞、体感などを可能とし、メディアやコンテンツ開発にも大きく寄与しています。
人間の英知とデジタル技術によって創り出されたこのような「デジタル文化財」は、護るべき本来の文化財との補完関係を築き、新しい形の文化資源としてその重要性を増していると同時に、さらなる新たな役割も期待されています。