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会の冒頭、主催者を代表して、当機構代表理事の本田牧雄が挨拶。2010年に発足した当機構の2つの活動目的を「デジタル文化財の保存・蓄積と活用のための基盤を、国家として整備するべく政策提言する」ことと「現物の文化財との融合を図りながら新たな価値を提供する『進化するミュージアム』の実現」と説明。
「文化財を対象とする日本のデジタル化技術と公開のためのコンテンツ品質は世界でもトップレベル。しかし残念ながらデジタル文化財の活用に向けた基盤整備は欧米に比べて後れをとっている。中国、韓国も、文化力を発信することで世界の中での存在感を示すことを目指し、国家レベルで積極的な投資を図っている。また、本物の文化財からは得られない、復元、シミュレーション、人間の目の能力を超えた鑑賞など、新たな楽しみ方や感動体験を提供できるデジタル文化財の可能性を追求していくことも当機構の活動目的。本日は、その具体的な事例を展示と各セッションでご紹介させていただきたい」
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2012年6月に発足した超党派国会議員による議員連盟「デジタル文化資産推進議員連盟」の現会長であり、本領域に理解・関心いただいている小坂憲次議員は、デジタル文化財の保存技術や保存の在り方を当機構と一体となって議論し、法的な裏づけや予算を応援していくという議連の活動主旨を説明。国力とは、そこに住む人や民族あってのもの、すなわち、民力・文化力。文化力は時代の経済力、あるいは民力の蓄積の上に独自のものが築かれ、国の魅力そのものでありアイデンティティそのもの。日本は外国人観光客が一千万人を突破し、ますます誘致ということに、2020年を例にとるまでもなく推進していかなければならない。国の成り立ち、文化というものをどうやってみていただくか、見せ方を工夫する必要があると強調された。
「今日のシンポジウムの展示を拝見し、なるほどなと、つくづく感心させられた。我々が五感で感じるものすべてを動員しなければ見えないもの、さらには五感を通しても見えなかったものが、デジタル技術でワクワクする見せ方ができる。デジタル技術は日進月歩よりも早く秒速で進化している。テレビはハイビジョンから4K、8Kへ進化し、またメモリー技術やシステムそのものも変化する。時代を超えてデジタルで保存することは大きな課題。国としてバックアップし、一つの方向性をみなさんといっしょになって考えていきたい。このシンポジウムはその時流を得たものであり、わたしたちも期待をし、スタートラインとしてデジタル保存が身近なものとしてとらえられ、活用されるように浸透していくことを願い、これからも協力していくというお誓いも申し上げたい」
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続いて、当財団の初代業務執行理事であり、2013年7月に文化庁長官に就任した青柳正規氏から、シンポジウムのタイトルにちなんでミュージアムの起源について展開。紀元前3百年頃アレキサンドリアにムーセイオンというものができた。プラトン、ソクラテス、アリストテレスなどの天才が輩出しきってしまっていた当時のギリシャ人は、そんな天才の到来を期待するよりも、自分たちが何を知っているか、何をみてきたのかを一同に集め、その組み合わせや変化したものによって新しいものを生み出そうと、自分たちが知っている世界、すなわちオイクメネ(エクメーネ)を徹底的に知り尽くすため、知の蓄積装置としてムーセイオンを作った。ムーセイオンは博物館もあれば図書館もあれば植物園などまでも含まれていた。王様が貴重な本をコピーし、図書館に入れることで、オリジナルのものとコピーが混在する場所だったという。文化財をデジタル化するということは、2300年以上の歴史を持つ博物館の習性からすると当然の流れ、と述べた。
「文化財はルーブルやバチカンや東博というふうに異なる場所を歩かないと比較検討することができない。しかし、デジタル化された文化財は、それらを串刺しにして比較検討できる。知の集大成をデジタル化によって共通化することで把握できる。デジタル文化財は、認識を豊かにし、さまざまなイノベーションを啓発していくための重要な役割を果たす。EUでは、ヨーロピアーナという装置を開発し着々と蓄積量をふやしている。知の世界、文化的な世界をより強固なものにするため、我々がやろうとしていることは重要な取り組み。小坂先生やこの機構が中心になってぜひこの運動を推進していただきたい」
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