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活動報告
シンポジウム「文化情報の整備と活用 〜デジタル文化財が果たす役割と未来像2012」報告
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シンポジウム報告
第二部「100人委員会」討議
「100人委員会」討議
第二部「100人委員会」討議では、博物館・美術館、図書館、文書館、大学・教育関係、企業などから当機構の活動を支援・応援いただく「100人委員会」第一回総会を開催。賛同いただいた委員114名のうち70名近い皆様にお集まりいただき、第一部最後に登壇いただいた東京大学・吉見俊哉氏を進行役として討議を行った。討議では冒頭に事務局から100人委員会立ち上げの経緯、政策提言骨子の確認など、これまでの経緯を説明。引き続き、具体的な討議に移った。以下、討議の発言を抄録として記載する。(※敬称略)

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100人委員会会場写真1

吉見(東京大学大学院情報学環)
これまで「戦略委員会」として15名程度で議論してきたが、もっと輪を広げていく必要があると考えた。100人とは無謀だと言われるかもしれないが、とにかくやってみようということになった。ただし、本日は論点を人材育成と拠点形成の2点に絞って議論したい。拠点形成について戦略委員から説明する。

高野(国立情報学研究所)
日頃の課題を話しだすとリストアップになってしまう。成果ある議論にするために白地図を用意した。素材のリストと思っていただきたい。共通で使えるプラットフォームとして、全国レベルでどういった仕組みが考えうるか。それを発信していく仕組みが必要。MALUIは丸いわっかのような循環していくイメージになるかと思う。

【図1】
白地図1

【図3】
白地図3
【図2】
白地図2

【図4】
白地図4
※【図1】、【図2】は、議論のベースとなりスクリーンに投影された“白地図”(「中央拠点と地域拠点の連携」と「必要となる人材」についての資料)。
委員の発言・議論の結果、必要となる要素が【図3】、【図4】のようにキーワードとして付箋のようにプロットされていった。

※【図1~図4】をクリックするとそれぞれ拡大できます。
佐々木(東京都美術館)
人材育成の課題は何かを「戦略委員会」で議論してきた。連携と言われているが、まだまだ縦割りでできていない。3種類の人材の種類があれば、ある程度循環する仕組みができるのではないか。
1:シニアコーディネーター(国立館レベルの専門性)
2:文化情報コーディネーター(実現可能な規模を考えた場合、行政区に一致しないで、30万人に一人、全国に300人程度を配置するイメージ)
3:地域資源エディター(ボランタリー、自分たちでデジタル化をすすめ、地域資源を考える)
戦略委員会で作ったタタキなので、100人で議論を深めていきたい。これなら提言をしても実現していくのではないかという知恵をわかちあって次へ進んでいきたい。

吉見(東京大学大学院情報学環)
ここから一種のKJ法をやっていく。発言をキーワードにして、PPTに貼っていく。まずは、現場に近い、MLA、企業の人に話を向けてみたい。

金子(興福寺国宝館 館長)
国づくりにつながる重要な事業の提言。経済右上がりではない日本で、文化でどう国づくりをするのか。全体の問題として考えなければ日本は危ないという危機意識が必要。全国レベルの中で国がどう具体的に取り組んでいるか、成果は何か、検証する必要がある。現場の実情を確認調査する必要がある。下からの現状把握、国がやっていることの確認をすべき。

100人委員会会場写真2
村上(京都国立博物館)
京都の実例を紹介したい。文化財ソムリエという事業を展開している。美術史関係の大学院生を任命し、館で教育し、小中学校へ出前事業をしている。国宝を持って行けないが、デジタルを持ち込んで、小中学生へレクチャーをする。定着し始めた。地域に根ざす事例。大学院生が誇れるように、認定証を館長が渡している。

島谷(東京国立博物館)
美術史学会の提言で、昭和54年にアーカイブの活用の要求をうけて東博に資料部が設立。平成13年に独立行政法人化の流れで資料部が解体、一部が情報課に。創立140年にあわせて、トーハク1089を展開しているが、芸大生に列品解説をやってもらっている。業務の一環にならないと進まないし、形式だけになる。核になるように業務に位置づけていく。

水谷(東京国立近代美術館)
国立近代美術館では非常勤が現場を支えている部分が大きい。仕事をどう伝えていくかを考えなくてはならない。ITの技術を持っている人が美術館の現場に入る場合と、美術史・文化財を勉強していた人がITを身につける場合と、二つのベクトルが同じ場で議論する場がない。文系理系の融合、出会う場が必要。

岡島(東京国立近代美術館)
専門を映像としてきたが、日本はもっとも映像を作り最も失ってきた国で、アーカイブセンターの成立が遅かった。もっと活用したいという要求は高まってくる。映像の保存は簡単という考えが広まりやすい。コンテンツ、キャリア、コンテクストが三位一体になって保存されるべき。コンテンツとキャリアが引き離される。キャリアの上に乗っているのが、メディア、スタッフ数を増やすのが必要だが絶望的に難しい。基礎になるモノとして映像を保存しているところが衰退している状況。

川口(国立西洋美術館)
ナショナルセンターに必要な機能として、作家・作品が本当に探せる、一つの館を越えた探せる仕組みが必要。

入江(慶應義塾大学メディアセンター)
学内の連携をやっていると、組織の再編というと一緒にしてしまってコスト削減しようという話になりがち。組織には歴史があるのに一方的な統合になりやすい。

小出(公益財団法人渋沢栄一記念財団)
「箱ものを作る」と聞こえると批判がある。機能と捉えたい。参加する組織がコントリビュートして運用する仕組みがあるのではないか。メリットを作り出すことが必要。

松岡(日本経済新聞社)
公文書館では専門職の養成が議論されている。こういった問題とどう結びつけるか議論していただきたい。

香取(社団法人日本放送作家協会)
利用する側のメリットはなにか。エンタメ性をどう入れ込むか。情報コーディネーターの役割で大切な視点である。

小野(株式会社サペレ)
データ収集サステイナビリティの過信があるが、あまり気にしなくてよい。無期限=長期間、1世紀以上と考えてよい。

森岡(株式会社日立製作所)
手を動かして実現を支援していく立場として、センターの物理的機能はなるべく小さくすべき。サービスはどこでも受けられる。バーチャルで充実していく方向性が大切。

井上(独立行政法人情報通信研究機構)
情報通信の研究に携わってきた立場として、流通させるために、いろいろなデータが存在する中で、均質性が確保できるか、が重要。

福井(骨董通り法律事務所)
提言の先に、権利処理の問題。権利処理のコストを低くしていくこと。公的な資金の一方、マネタイズもありうる。鍵は孤児作品対策。法制度、仕組み作りが必要。

井口(京都府立総合資料館)
各地域で、バラバラにやっていて、お互いの情報交換が必要。縦割りが解決されていない。現物の重要性は強調したい。地方ではMLAを別々に建てることができない中、地域では、国がやってくれるなら地域でやらなくていいと誤解してしまうことがあるので、そうならないようにしていただきたい。

八村(立命館大学)
トップダウンではうまくいかない問題。中央拠点は箱ものではないにしても、センターである必要があるのか。自分たちで発信してねという部分から始めたほうがいいのではないか。

100人委員会会場写真3
福島(京都府立総合資料館)
利用者のメリットを考えると、地域と中央をつなぐ人材としてのコーディネーターは文化情報のバイヤーでありセールスマンである。文化財保護制度がきちんとまわっていたら、それが実現していたはず。阪神大震災、東日本大震災を経て、地域資料ネットが重要性を増している。

榎並(独立行政法人情報通信研究機構)
ボトムアップからはその通り。アーカイブすべきモノを流通させるためのメタデータ、標準化を進める、どうやって残すのか。世界からアクセスできるようになるとよい。

水島(東海大学文学部)
文化資源を保存する前に、まだ生きているものは生かした状態にしていくか、生きた環境を保存するようなことも必要。

大貫(アジア太平洋無形文化遺産研究センター)
デジタル化が研究機関でされてきたが、記録を残した先の利活用の議論が根本的にされるべきことが必要。

籔内(東京藝術大学)
地域文化資源が一番重要。みんなが共有して楽しまないことにはまったくおもしろくないモノができあがってしまいかねない。

村上(京都国立博物館)
籔内さんに全く同意である。現物の重要性を重視したい。名称については、オールジャパンでやるのに、どうしてスミソニアンなのか?

高野(国立情報学研究所)
他愛も無く使ってしまった言葉だが、ご指摘の通りであり仮のタイトルである。スミソニアンを訪問した際に、カバーするレンジの広さに感心し、メモリーインスティチュートとして参考になると考えた。八村氏、榎並氏、籔内氏が指摘された上と下については、上下関係を示す意図はない。下がくめどもつきぬようなもの。木の根っこ側。土壌のようなものと捉えたい。既存の組織をこえたものがつながっていきたい。
〈「100人委員会討議」次ページへ続く〉


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