Contents

活動報告
シンポジウム「文化情報の整備と活用 〜デジタル文化財が果たす役割と未来像」報告
12 次のページへ


本機構は2010年5月に多くの学識経験者、美術館・博物館関係者の方々にご参加をいただいて設立し、おかげさまで一年を迎えました。この間、「文化情報の整備と活用」等の検討課題について、各テーマ別の研究会を立ち上げ、国等への政策提言発信に向け活動を進めてまいりました。
本シンポジウムでは、その活動進捗報告と今後の展望を共有すべく、有識者の方々からご講演・ご報告を行っていただきました。


シンポジウム開催要項
名称: シンポジウム「文化情報の整備と活用 ~デジタル文化財が果たす役割と未来像」
日時: 平成23年7月22日(金) 13:30~17:00(13:00開場)
会場: 丸の内・コンファレンススクエア エムプラス
(東京都千代田区丸の内2-5-2 三菱ビル1階)
主催: 一般財団法人デジタル文化財創出機構
後援: 総務省、文化庁
シンポジウム報告
第一部セッション「デジタル文化財が果たす役割と未来像」


開会挨拶

本田牧雄 一般財団法人デジタル文化財創出機構 代表理事


開会に際し、当シンポジウム開催の経緯と問題意識について説明したい。きっかけは2010年に開催した「『デジタル文化財創出と活用』に関わる懇談会」での有識者による課題抽出にある。各課題を体系的・戦略的に取り組む必要があるという認識で一致し、また、海外の民間資本脅威や、国家レベルでの戦略的推進体制構築(中国、韓国)、欧州におけるデファクト化等の動きや、フィルムメディアの衰退、ハードディスクの永年保存リスク対策など、外部環境の変化への認識も一致、その受け皿として当機構を設立した。特に、国レベルで取り組むべき課題について、政策提言を行うための各種テーマ別の研究会活動を進めてきた。今日は、保存技術・標準化・知財課題・文化情報の整備と活用について、将来に向けた理念・ビジョンを共有するとともに、議論・整理の中間報告としたい。また、発表内容で頻出しそうなキーワード(例えば「文化資源」や「文化情報」)等の単語)は、今後詳細な議論が必要ではあるものの、現段階の解釈として定義づけをした。 本田牧雄氏

配付資料ダウンロード
↑配付資料はこちらからダウンロードできます

キーノートスピーチ


デジタル文化財が果たす役割と未来像

青柳正規 独立行政法人国立美術館 理事長, 一般財団法人デジタル文化財創出機構 業務執行理事


なぜ文化情報の整備と活用が必要か。この問いに応えるべく、デジタル文化財が果たす役割と未来像について、活動の理念・ビジョンを提示したい。
日本は成熟社会であり、少子高齢化社会が進む。地方分権が進み、地球規模でのグローバル化が加速する中で、これからの日本は、量的・相対的にダウンサイジングし、経済・人口・ODAの額といった点でも同様である。質的充実・向上の方策には、文化を中心とした等身大の自己認識が必要。一方、伝統的日本文化と現代の日本文化の距離が離れすぎており、お互いがもう少し近づくことで、伝統と活力が融合した文化が生まれる。そのためには、空気のような文化を対象化し、文化の棚卸しをすることが必要。膨大なデータを蓄積できるデジタル化を中核にし、有形・無形問わず文化財をデジタル化する必要がある。
  また、文化財のハザードマップをいま作らなければならない。3.11を経験した我々には責務がある。今後は、政策提言に向け、支援・応援サポーターとしての100人委員会を組織し、活動をしていきたい。
青柳正規氏

配付資料ダウンロード
↑配付資料はこちらからダウンロードできます

ゲストスピーチ1


文化財等のデジタルアーカイブ推進に向けて

栗原祐司 文化庁 文化財部美術学芸課 課長


4年前に、文科省で新しいデジタル文化の創造と発信について、時間と空間を超える、利用価値が高くなる、来館者には精神活動の活力となる、といった提言の報告書をまとめた。今年の2月に文化芸術の振興に関する基本的な方針にも、閣議決定文章でMLAが明記されている。その元になった美術ワーキングでも、MLA連携、人材育成など、具体的に議論された。昨今は施設より機能としてのMLAに注目が集まっている。公文書館でも、近代行政文書の保存活用の必要性が高まっている。図書館のOPACと博物館目録の連携も課題。文化資源の有効活用という視点では、情報検索システム・デジタルデータからの複製・デジタル復元などがある。文化遺産オンラインもリニューアルし、より機能を高め活用を進めている。芸術文化振興基本法の理念に沿って、世界中どこにいても自由にアクセスできる、永遠の生命と普遍性を実現していきたい。 栗原祐司氏

配付資料ダウンロード
↑配付資料はこちらからダウンロードできます

ゲストスピーチ2


『知のデジタルアーカイブ』進捗と今後の展望

黒瀬泰平 総務省 情報流通行政局情報流通振興課 課長


黒瀬泰平氏

配付資料ダウンロード
↑配付資料はこちらからダウンロードできます
現在「知のデジタルアーカイブに関する研究会」を行い、知的資産のデジタル化を進めている。昨年3月からはデジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会を行い6月に報告書をまとめた。3つのワーキンググループがあったが、文科省・経産省と連携して進めた。アクションプランとして、いくつか提言をまとめている。電子出版のフォーマット統一(ePubの日本語化)、書誌情報の標準化などをあげている。
総務省は10のテーマを掲げ取り組んでいる。特にメタデータ検討委員会では、実証的な取り組みを実施。レジストリの仕組みを作り、運営ガイドラインも策定した。近々、協議会をつくってメタブリッジ(レジストリの仕組み)を公開、運用していく予定。それ以外のデジタルアーカイブ課題の総ざらいもやっていく。研究会の趣旨の中で、「知の地域作り」をやっていくというキーワードがある。自立した市民を地域でつくっていくための拠点が必要で、候補は図書館や美術館。そのために、デジタルアーカイブは一つのソリューションとして重要である。

テーマ別報告1


デジタル保存に係わる技術・管理体制

小野定康 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 特別研究教授


デジタルデータの保存と管理の長期的・決定的方法はない。しかしあまり気にしていては進まないので、現場の方々はあまり心配せずにどんどんアーカイブを進めてほしい。
巨大なハードディスクでも、一部が壊れると書き込めなくなる。ハードディスクは5年が寿命。磁気テープも、放送局などは長期保存に対して信用していない。CD/DVDも、アメリカ・NISTが約20年といっている。フラッシュメモリは20年以上ということが予想されるが、アクセス回数と期間はトレードオフの関係にある。紙は数百年、石、木・竹の寿命はもっと長い。では文化財はどう考えるか。永久保存が理想であるが、便利で十分なセキュリティが確保され、国際基準への適用が必要だろう。
具体的な保存例として「ライトアーカイブ」、「ダークアーカイブ」の事例を紹介したい。
「ダークアーカイブ」には15枚のブルーレイディスクが入っている。8〜16テラバイト入る。中は真空になっており長期保存ができる。携帯で認証し、ブラウザで画像をダウンロードするセキュアなシステムを開発している。
小野定康氏

配付資料ダウンロード
↑配付資料はこちらからダウンロードできます

テーマ別報告2


文化資源のデジタル化における標準化

高橋英一 凸版印刷株式会社 文化事業推進本部


高橋英一氏

配付資料ダウンロード
↑配付資料はこちらからダウンロードできます
デジタル化の際、よりどころが必要ということで東大の研谷先生と共同研究をおこない、その研究概要をハンドブックにまとめた。「これを全てやらなくてはならない」というものではなく、組織にあったデジタル化の方法を取捨選択してほしい。
はじめに、国内外でのアーカイブの実態に関するアンケート調査を行い課題を抽出。2009年に標準化の評価版を作り、2010年度にハンドブックとして完成。ワークフローにそって、詳細を説明している。今後は事例集のとりまとめを計画している。繰り返しになるが、データの由来を記録する重要性を示す、そのときの目安として活用していただきたい。WEBでも8月中に公開予定なので参照いただきたい。

テーマ別報告3


デジタルアーカイブの著作権課題について

福井健策 骨董通り法律事務所 代表パートナー弁護士


デジタルアーカイブと権利について考えるとき、2つのポイントがある。一つは、構築時・運用時の問題。デジタル化するには著作権者の了解が必要で肖像権の問題も絡む。著作権法とは違って憲法以外に根拠法がないので留意する必要がある。もう一つは、アーカイブを公開・発信するとき、すなわち二次的な活用時の問題。
国会図書館「近代デジタルライブラリー」は24万冊をアーカイブしたが、権利者が見つからないものは文化庁長官の裁定制度を利用した。明治期の書籍は、著作者の死後50年で著作権が切れるので、ほとんどがPD(Public Domain)。「オーファンワークス(孤児作品)」と呼ばれる権利者不明作品の問題もある。権利処理のコストにも問題があり、一つは使用許可の代償としての利用料(=印税)で、これは払って解決するなら安い場合も多い。二つ目は許可を取るのに要するコスト(=トランザクションコスト)。これらコストをいかに下げるかは課題である。
YouTubeの多くは権利処理せずに公開している。しかし、ユーザーがアップする映像には人の作品が使われており、明らかな著作権侵害のため巨大訴訟も起こっている。負ければ、即日でサービス停止するだろう。一審では、DMCA法(Digital Millennium Copyright Act)(権利侵害の通知を受けたら削除する。プロバイダの責任は問わない)があり勝訴。アップされたくない人は手を挙げて削除する(オプトアウト)。書籍版や映像版のJASRACを作る構想もあるが時間がかかる。権利情報のデータベースができるとアーカイブがうまくいくのではなく、アーカイブのプロジェクトこそが権利情報データベースの整備のきっかけになるべきであろう。
福井健策氏

配付資料ダウンロード
↑配付資料はこちらからダウンロードできます

テーマ別報告4


文化情報の整備と活用戦略

吉見俊哉 東京大学大学院情報学環 教授・副学長


吉見俊哉氏

配付資料ダウンロード
↑配付資料はこちらからダウンロードできます
東北の被災地では4ヶ月たった今でも言葉を失う状況がある。この状況を記録しアーカイブ化するムーブメントも起こっている。継続可能なかたち、社会的基盤、制度としてどうしていくかということついて、これまで戦略研究委員会で議論を重ね提言案としてまとめた内容を報告したい。
社会のパラダイム転換、ことさら豊かさの転換は全アジアで起こっている。高度な文化的集積がある日本で、再利用し文化価値へ転換する際にデジタル文化財の意義が高まる。①俯瞰的調査、②総合的に共有するしくみ、③法的処理の効率化・規格化、④デジタル文化情報の標準化・共有化、⑤包括的に利用できるしくみ、この5点が提言の内容として挙げられる。
20世紀は文化づくりの主体はマスコミやメディア産業だった。21世紀は、主体が「MALUI(※1)」になり、保存・利活用される循環型に転換していく。「MALUI」がやるべき一つは、担い手としての人材育成。地域サポーター、地域情報エディター、デジタルキュレーターといった層別の人材像がありえる。二つ目は法整備。これは、①標準ライセンスの開発、②集中権利処理する仕組みの整備、③メタデータの交換センターの仕組みの構築、の3つの突破口がある。さらに、拠点を京都、東北に設け、大規模なヘッドクオーターとしてインターナショナルに活動していく。俯瞰的調査・人材育成・制度整備・拠点整備の4点が提言の骨子。この後の第2部で議論したい。
(※1) MALUI:Museum、Archives、Library、University、Industryの5つの単語の頭文字をつなげた造語

12 次のページへ


ページの先頭へ