Contents

活動報告
進化するミュージアム2010報告
123 前のページへ次のページへ
記念講演内容のダイジェスト
記念講演3
無形文化財のアーカイブス・・・、伝統芸能の記録と再現
源田悦夫 九州大学大学院芸術工学研究院 教授
松永孔梨子 九州大学感性融合デザインセンター
〈人体の記録〉
無形文化財の領域では、どのような研究が進められているのかを講演。人体の形状やその動きの具体的なデジタル計測の方法を、カンボジアの宮廷舞踏「アプサラダンス」の舞踏家を対象に行った様子を通して紹介した。また、人体のCGモデルでは、表面的な表現が多い中で、筋肉の動き、眼球の動き、足圧分布などの計測データからなどの科学的なアプローチの重要さも説明した。

源田教授による講演の様子

アプサラダンサーの計測
源田悦夫教授
源田悦夫教授
松永孔梨子氏
松永孔梨子氏
〈歌舞伎の化粧〉
江戸時代から現代まで続く伝統芸能「歌舞伎」では、その独特な化粧が照明環境を含む演出の面で大きな役割を占める。役者の顔かたち、舞台照明環境、化粧材料・道具や化粧法などからなる化粧を、その時代背景や風俗文化を含めて伝承するためのアーカイブ手法の研究を紹介した。アーカイブの主な目的である、記録、再現やシミュレーション等への応用のために、実体物としての模型と仮想物としての3DCGの2つの手法を併用させ、情報コミュニケーションの特性と効率を考慮するという視点を提示した。

松永氏による講演の様子

歌舞伎役者の人体計測とCGモデル、光造形によるリアルモデル
記念講演4
神秘に満ちた眼差し、興福寺・阿修羅像をもっと身近に知る
金子啓明 慶応義塾大学 教授・興福寺国宝館 館長・東京国立博物館 特任研究員
今津節生 九州国立博物館 環境保全室長
輪田 慧 九州国立博物館 環境保全室
〈阿修羅像にこめられた思いとは?〉
現存しない建造物「興福寺中金堂」のバーチャルリアリティによる再現映像を上映し、時間と空間を超えるデジタル情報の活用の可能性を示した。また、実在する阿修羅像については、高精度な三次元計測と表面質感情報に裏付けされたバーチャルリアリティ映像の上演を行い、阿修羅像の極めて豊かな表情について歴史的・文化的背景とともに解説。デジタル情報の活用による今後のミュージアムの公開手法の可能性も示唆した。

金子教授による講演の様子

2009年「国宝 阿修羅展」にて上映されたVR作品『よみがえる興福寺中金堂』

今津室長、輪田氏も加わった
CTスキャナーの講演の様子

2009年「国宝 阿修羅展」にて上映されたVR作品『阿修羅像』
金子啓明教授
金子啓明教授
今津節生室長
今津節生室長
輪田 慧氏
輪田慧氏
〈CTスキャナーによる1270年目の健康診断〉
東京国立博物館で開催された「国宝 阿修羅展」が巡回した九州国立博物館で、<X線CTスキャナー>による計測が行われた。1270年を経て初めて行われた阿修羅像の健康診断ともいうべき調査の結果が報告されたが、永い年月を経たお像の内部の健康状態は、極めて良好と判断されるとともに、これまで不明のところが少なくなかった製作工程が解明される可能性が高まった。X線CTスキャン画像の細かな分析で、表面材質や内部の芯木とその状態、組方やクギの位置などが鮮明なデジタル画像により確認された。
また同時に、X線CTスキャンのデータにより表面の正確な形状と制作の最初に作られる塑像原形の形も判明した。このデータを基に、三次元プリンターで出力した造形の原寸大の立体モデルを石膏樹脂で製作し、初めて公開した。このモデルは、実際には触れることのできない貴重な文化財を手に取って体感的に公開することもでき、将来の新たな展示手法として期待されることも提示した。

本シンポジウムのために、新たに作られたデジタルデータからの造形品。計測データから再現された阿修羅の顔と表面および像内の麻布肌を再現した立体モデルが展示され、初めて公開された

シンポジウムのまとめ
吉見俊哉 東京大学大学院情報学環 教授
当機構評議員でもある吉見氏から財団の活動として、「文化と未来」、「保存と活用」、「形とことば」の3つのキーワードを提示。文化を視野に入れた技術は、過去や歴史の中に未来を見い出し、デジタル技術による保存は十分なその活用との共存が重要になる。そして有形無形文化財だけではなく、デジタル分野のMLA連携が重要になると考える。こういった意識を持って活動をしていくほかに、デジタル・キューレターの育成と国際的な協調、特にアジア圏における連携も今後の問題としていくという方向性を提示した。
吉見俊哉教授
吉見俊哉教授

123 前のページへ次のページへ


ページの先頭へ