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活動報告
進化するミュージアム2010報告
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シンポジウムの開催目的と概要、および基調講演
開催目的
1. 文化財とその関連情報の集積の場である『ミュージアム』 に新しい価値と機能を付加するための最新の研究成果と事例を呈示、本来のミュージアムの実現に向けた起爆剤とする。
2. 一般財団法人「デジタル文化財創出機構」の設立趣旨(以下の4点)とその「志」を発信する。
 ・デジタル文化財創出に関わる文化財情報、人材情報、技術情報などの情報ハブ機能
 ・デジタル文化財創出に関わる機会作り、各種提言とその事業化
 ・デジタル文化財創出に関わる人材育成活動の支援と顕彰
 ・デジタル文化財創出に関わる国際協調、特にアジア圏での推進支援

樋澤主幹
当機構研究主幹 樋澤明の進行でシンポジウムは進められた
シンポジウム概要
1. 開催目的の理解促進のため現在進めている関連研究などを広く紹介。
2. 基調講演として、当機構理事の青柳正規氏からデジタル技術とミュージアムの関係を解明。
3. 新たな文化資源である「デジタル文化財」やその体験を可能にする新しいミュージアムの姿を提示するための記念講演として、

(1)遺跡など巨大文化財のアーカイブ技術の開発
(2)文化財の素材などに言及するミクロの研究
(3)文化財の製作工程や技の解明と保存科学
(4)人に関わる無形文化財のデジタル化技術と情報伝達手法の具体的な事例

を分かりやすく、提示した。
基調講演
デジタル技術がひらくミュージアムの未来像
青柳正規 独立行政法人国立美術館 理事長 国立西洋美術館 館長
現在のミュージアムは、知りたい過去の文化や時代の限定的な呈示をする場となっている。限定的な呈示と実際の時代や文化との間には大きな違いや格差があるが、この格差を埋めるための知的好奇心を生み出す場所が「本来のミュージアム」と定義。実体標本としての希少なモノは存在感を持ち、様々な情報を読み取ることができるが、それに関わる変化、変容の推移、他との関連性などは表現できない「既存ミュージアム」と、デジタルに置き換えられた情報が主体で、実体がないために様々な分析には対応できないが、コピーなどによる複数化と情報発信が自在にでき、変化変容の推移を表現できる「デジタルミュージアム」の特徴を鮮明にした。さらに、この2つのミュージアムの補完関係以上の可能性を追求するために、新たな可能性が付与された「新たなミュージアム」の役割と機能を創出した「次世代ミュージアム像」の構築について言及をした。 現状では、デジタル文化財には、リアリティ、永続性、確証性、実体性、自己増殖性などの面では限界がある。そこで、無限に深化拡大するデジタル技術に「次世代ミュージアム」という限界や枠組みを付与することにより、一部のデジタル技術が深化と要素技術の相関性を獲得し、「次世代ミュージアム」のために開発されたデジタル技術が“文化”化する可能性がある。それをも目指していると最後に締めくくった。
青柳正規館長
青柳正規館長
有楽町朝日ホール
500名以上の来場者を迎えた有楽町朝日ホール
ある時代、ある文化の復元と推移
記念講演内容のダイジェスト
記念講演1
デジタル技術が解き明かす文化財の新しい事実と最新の見方、見せ方
池内克史 東京大学大学院情報学環 教授
〈大型遺跡の高精度な三次元計測研究と色彩計測研究〉
空高く揚げたアドバルーンからレーザー光を発射し、巨大な遺跡の形を計測するようなユニークな方法を次々に開発し、カンボジアのアンコール遺跡バイヨン寺院、イタリアのポンペイ遺跡、九州の彩色古墳などの文化財をデジタル化することの意味や得られた情報の活用などを講演した。後半には、池内研究室が、数年の歳月をかけ取得した、世界最大級の遺跡データを活用し、凸版印刷が制作したVR映像『アンコール遺跡バイヨン寺院 尊顔の記憶』を上映した。「古代ポンペイ遺跡」については、家屋遺跡の詳細な三次元計測に加え、全周囲カメラを使用した包囲型投影技術による映像も公開した。表面の質感情報の研究では、照明光源と対象物の分光反射特性を計測し、異なった照明下の変化を視覚的に再現するシミュレーション研究の成果を発表した。
池内克史教授
池内克史教授

池内教授による講演の様子(1)

池内教授による講演の様子(2)

アドバルーンからの計測
〈クラウドミュージアム〉
最後に、新しいミュージアムの考えとして、強化現実感やE-HERITAGEとしてのクラウドコンピュータ上に存在させる〈クラウドミュージアム〉の提案をした。

平城京遷都会場で行った複合現実感システムの一般公開


記念講演2
よみがえった三角縁神獣鏡にアナタの顔が映る!?
村上 隆 京都国立博物館 保存修理指導室長
材料科学の専門家として、文化財を長く保存するために、科学の視点で観察、分析することを重視している。最新のデジタル技術の活用は新たな修理方法の発見にも繋がる可能性を秘める。古代の青銅鏡を電子顕微鏡やX線分析を用いて金属元素の成分分析を行うことで実際の合金を再現した。また、3次元形状計測データから現代の技術で鏡面のカーブを磨き出し、鏡を再現する試みを紹介した。実際に再現した鏡面を披露した後、希望者に壇上で、実際に映るご自身の顔を見ていただいた。
触れる事ができない貴重な文化財を再現し、身近に触れたり、感じることもミュージアムの新しい価値となることを提示した。
村上 隆室長
村上隆室長

村上室長による講演の様子

ステージ上で鏡に映る自身の顔を
見る来場者

三角縁神獣鏡

青銅鏡の計測データの部分

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